会 議 録

第150回 衆 「法務委員会」 10号
2000/11/17

○高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。 ただいま杉浦委員の方から民事再生法関連についての御質問がございましたので、私は、外国倒産処理手続の承認援助法案について質問をさせていただきたいと思います。 今まさに、今大臣がお話しされましたスピードの時代、時代が大きく動いている、変わっている、そういうような中で、グローバル化がここ数年来ずっと言われ続けております。経済の分野ではまさに国境がなくなってきた、そんな中で、今回国際倒産法制の法整備というような形で行われていると思うのです。 その中でも特に、この法律の提案理由の説明で、「国際的な取引が活発になり、資産の国外移転も容易になったことから、複数の国で事業を行い、資産を保有する企業等がふえるとともに、国際的に経済活動を行う企業等が経済的に破綻する事例も増加」しておる。経済がどんどんグローバル化して活発になるのはいいのですけれども、倒産もそれに応じてあるわけですから、そんな中で、「我が国の国際倒産法制においては、国内で開始された破産手続等の効力は債務者の外国にある財産には及ばず、他方で、外国で開始された倒産処理手続の効力は債務者の日本国内にある財産には及ばないものとする属地主義が採用されており、」云々とずっとあるのですけれども、必要だな、これは多くの人たちが実感していると思うのです。 そんな中で、これが行われなかった場合、具体的にどんな不都合が生じるのか、ここら辺のところをまずお聞かせ願いたいと思います。

○細川政府参考人 御指摘のとおり、現行法の倒産法制では、いわゆる厳格な属地主義が採用されておりまして、多国籍企業等の倒産事案につきましては、さまざまな不都合が生じております。 まず第一点といたしまして、破産手続等が開始された場合であっても、一部の債権者が手続の開始した国以外の国にある債務者の財産から抜け駆け的に債権回収をすることができることになっています。 例えば、日本で破産宣告を受けた債務者が外国に有する財産について、一部の債権者が、強制執行を申し立てるなどの方法によって、事実上優先的に満足を得る可能性があります。しかも、外国における債権回収額を国内の破産手続における配当額に反映させて調整する規定も整備されていないため、外国で抜け駆け的な債権回収を行った債権者も、国内の破産手続においては、他の債権者と同じ割合の配当を受けることができます。このように、国外財産からの債権回収を図ることができるのは、外国にある資産の存在を把握するだけの情報収集力があり、海外での活動を可能にする組織力と資金力を持った企業に限られておりますので、それ以外の債権者との間で公平を害する事態が生ずることになります。 また、外国で再建型の倒産処理手続が開始された債務者の日本国内にある財産について、それが事業を継続する上で必要不可欠なものでありましても、債権者は、日本で強制執行を申し立てて、競売等に付することができるわけでございます。こうした場合でも、現在の倒産法制のもとでは、強制執行手続を中止させる、あるいは担保権の実行を中止させるという方法はないものですから、国際的な規模での合理的な再建計画の策定が難しくなってまいります。 他方、債務者が弁済に充てるべき財産を手続が開始された国以外の国において使ってしまう、あるいは隠してしまうということも可能でございます。 例えば、日本で破産宣告を受けた債務者が外国に有する財産については、日本の裁判所が任命した破産管財人の管理処分権は及びませんので、債務者がこれを自由に換価して処分してしまうことができます。しかも、それを債権者への弁済に充てればいいわけなんですが、そういった義務もないものですから、みずからこれを使ってしまうということもできるわけです。もっとひどい場合には、もともと海外にあった財産だけではなくて、債権者から破産宣告を申し立てられそうになったので、それを隠すために外国に持っていってしまう、そういうことまでもできるものですから、結局、結果的には、不正行為が国際的な場面では野放しになっているという問題があるわけでございます。

○高木(陽)委員 今具体的な例を幾つか挙げていただく中で、それだけ不都合があったということですね。そういう不都合を解消していく、そういった意味では、この法律は本当に必要だなと思うのです。 ただ、感ずるところ、平成九年に、国連の国際商取引法委員会で国際倒産モデル法が採択されて、加盟国に対して、モデル法を踏まえた法整備を勧告した。平成九年ですから、そう考えますと、もう少し早くできなかったかなという思いもするのです。 それはそれとして、そういう努力をされたということで、そういった中で、今お話が出てまいりました属地主義が撤廃されたことによって、債務者の外国にある財産にも国内倒産処理手続の効力が及ぶということですが、ただ、日本の破産手続の破産管財人は外国財産に対してどのような措置をとることができるんでしょうか。

○細川政府参考人 ある特定の国で開始された倒産処理手続の効力が、他の国にある破産宣告を受けた債務者の財産に対してどのような効力を持っているかということについては、これは法律屋の仲間では倒産処理手続の対外的効力の問題といいますけれども、こういう問題については、条約による国際法上の統一的な規律はございません。ですから、これは各国の国内法の規律にゆだねられているわけです。 したがいまして、当該の外国の国内法においてこのたび御提案申し上げているような承認の手続が設けられている場合には、日本の破産管財人は、その承認の手続に従って、その国にある債務者の財産を換価して日本の破産手続における配当の原資とすることができるわけでございます。 また、当該外国の国内法において自動承認の制度がとられている場合、自動承認というのは、特に申し立てがなくとも、一定の要件を備えている場合には当然にその効力を自分の国でも認める、こういう意味なんですが、そういう自動承認の制度が設けられている場合には、特別の手続を経ることなく、その国にある債務者の財産を換価して日本の破産手続における配当の原資とすることができることになります。 また、その外国の国内法において承認の制度そのものは整備されていないという場合もありますが、そういう場合でありましても、外国の破産管財人に裁判手続における当事者適格を認めるという場合もあります。そういう場合には、日本の破産手続の破産管財人は、その外国において債権回収のための訴訟提起や強制執行申し立てをすることができるということになるわけでございます。

○高木(陽)委員 今るるお話のある中で、制度が整備されていない国、これに対してどうなるか、承認援助の手続のような制度が整備されていない国で開始された外国倒産処理手続を日本で承認することはかえって不公平ではないかな、そんなふうにも考えられるんですけれども、承認援助手続において相互主義、お互いの関係ということになりますけれども、この相互主義の考え方をとらなかったのはなぜなんでしょうか。

○細川政府参考人 外国倒産処理手続の承認につきまして相互主義を採用した場合には、外国倒産処理手続の開始国において日本の倒産処理手続が承認される場合に限って、当該外国倒産処理手続を承認することになります。こういう場合には幾つかの問題があるわけでございます。 第一は、相互主義というのは、他国あるいは他国民に対してこちらの手続の利益を与えない、そういう制裁をすることによって国と国との間の法秩序の不整合を是正しようというものでございまして、この考え方自体が国際協調の理念に反するのではないかということが第一点でございます。 第二点目は、相互主義を採用いたしますと、外国倒産処理手続を承認するに当たってその外国の承認制度を調査検討しなければならないために、承認援助手続が係属する裁判所に過度の負担を強いるということにもなります。 先ほど言及されました国連の国際商取引法委員会において採択されました国際倒産モデル法におきましても、今申し上げましたような問題点を考慮しまして、相互主義を採用しないということにしているわけでございます。 そういうことから相互主義をとらなかったものでございますが、国家間の法秩序の不整合を是正するというのが相互主義の目的でございますから、各国がこの国際モデル法に従った国内法の整備をいたしますと実質的には同様の目的が達成されるということで、各国がこのモデル法に沿って早急に整備することを求められているということになろうかと思います。

○高木(陽)委員 二十一条に、「次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、外国倒産処理手続の承認の申立てを棄却しなければならない。」このように書かれておりますが、一、二、三、いろいろありまして、三番目に、「当該外国倒産処理手続について次章の規定により援助の処分をすることが日本における公の秩序又は善良の風俗に反するとき。」とあります。よく法律で、この「公の秩序又は善良の風俗」、出てくることが多いと思うんですが、これは具体的にはどういうときということなんでしょうか。

○細川政府参考人 「公の秩序又は善良の風俗」という言葉は、一般には余り聞きなれない言葉かもしれませんけれども、司法の関係の法律の中には割とよく出てくる言葉でございます。 その意味は、ここでは、その外国倒産処理手続が我が国の法秩序から見て容認しがたいような著しく不合理な内容を含んでいるということでございまして、その問題は、実体法的な側面と手続法的な側面と両方から検討することになります。 まず、具体的に申し上げますと、外国倒産処理手続において配当等を受けることとなる債権の配当順位について、債権者の国籍、性別、宗教等が考慮されていて、極めて不合理な差別が存在する場合には、これは、実体法上の面においてこれを日本として容認しがたい、日本の公の秩序、善良の風俗に反するということになるわけでございます。 また、その外国の手続が日本国内にいる債権者に対して手続の参加を与える通知を一切しないというようなことになりますと、手続保障に著しい不備があるということになりますので、そういう場合には、手続法的側面において日本における公の秩序または善良の風俗に反するということになるわけでございます。

○高木(陽)委員 今そういう説明を受けると、ほう、そうかという形になりますけれども、本当に法律の用語というのが、法律の世界では使われるんですけれども、具体的な部分、ここら辺のところがなかなかイメージできない。ここら辺のところは、これは今回のこれだけの問題じゃないんですけれども、いろいろと御検討いただければな、そんなふうに一般の感覚として思います。 その上で、外国倒産処理手続が承認された場合に、今度は国内の債権者の利益、今まで国内の債権者というのは今までの法律でやってきたわけですけれども、その利益が損なわれることがないんでしょうか、そこら辺のところをお答えいただきたいと思います。

○細川政府参考人 まず、ただいま御指摘になりました、申し立てがあって承認することが日本の公の秩序または善良の風俗に反するときは、それは承認はされませんので、そういう不合理な外国の制度の場合は、日本の債権者は守られるということになります。 それから、承認援助手続におきましては、国内の債権者の利益を保護するために、債務者が国内にある財産の処分や国外への持ち出しをするためには、そういった行為や裁判所の指定する行為をする場合には裁判所の許可を要する旨の決定をすることができます。それから、承認管財人が任命された場合には、財産の処分とか財産の国外への持ち出しについては必ず裁判所の許可を要するものとしておりますので、日本の債権者の利益が不当に害される場合にはその許可が与えられないということになりますし、また、許可を得ないで持ち出した場合には罰則を整備しているわけでございます。 それから、国内倒産処理手続と承認援助手続とが競合した場合には、原則として国内の債権者の利益にかなう国内倒産処理手続を優先させるものとしておりまして、例外的に承認援助手続を優先させるのは、日本国内における債権者の利益が不当に侵害されるおそれがないことを要件の一つとしております。 したがいまして、承認がなされましても、日本の債権者の利益が不当に侵害されるということはないものと考えております。

○高木(陽)委員 続きまして、承認援助手続において、事件記録に関する閲覧についてどのような規定が置かれているか、それをお尋ねしたいと思います。さらに、営業秘密等の情報が公開されて、再建を図ろうとする債務者の利益が損なわれること、こういうことはないのでしょうか。

○細川政府参考人 承認援助手続に関する記録の閲覧につきましては、民事訴訟法の規定が準用されるほか、この手続の特殊性にかんがみまして、第十三条で、裁判所に提出された文書等の閲覧の請求権者、対象となる文書の範囲、閲覧等の時期的制限について規定を定めておりまして、この手続にふさわしい文書等の開示制度を設けているところでございます。 他方、利害関係人に対する閲覧を広く認めることによりまして、承認援助の目的の達成に著しい支障を生ずるおそれがある場合があります。 例えば、承認管財人が訴えの提起について裁判所の許可を得るために提出した文書を被告となる者が閲覧すれば、それは不利益が生じますし、承認管財人が営業譲渡について裁判所の許可を得るために提出した文書が債務者と競業関係にある者の目に触れることになりますと、競争力の低下を招く、あるいは、承認管財人が債務者による財産隠匿を裁判所に報告するために提出した文書が債務者の目に触れれば、証拠隠滅を招くおそれがあるというようなことで、そういうことを考慮しまして、第十四条におきまして、一定の文書等については、閲覧により承認援助手続の目的の達成に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、閲覧を制限することができるというふうにしているわけでございます。 それから営業の秘密が文書に載っているものが閲覧等によって公開されると債務者の利益が損なわれるのではないかという問題ですが、先ほど申し上げましたような規定がございますので、先ほど申し上げましたような文書に載っている場合には、それを制限することができるわけです。ですから、それ以外の場合にはその営業の秘密は載せることは必要ないわけでして、営業秘密を公開してもいいと判断した場合だけ、公開の対象となる文書に載せるということを債務者が判断すればいいわけです。したがいまして、債務者の意に反して営業秘密が公開されて、債務者の利益が損なわれるということはないものと考えているところでございます。

○高木(陽)委員 時間も大分なくなってまいりましたけれども、冒頭にも申し上げましたように、今グローバル化の中で、こういう国際倒産法制という法制度の整備というのをきっちりとしていく、本当に重要な問題だと思います。逆に言えば、これも最初に申し上げましたように、もっと早くできなかったのか。それは相手の国もあるわけですから、日本だけこうこうこうですという形にはいかなかった、平成九年の国連でのモデル法の採択ということが一つの節目となったと思うのですけれども。逆に、これからの時代、さらにグローバル化という形が進んでいくと思うのです。そういった中で、今回のこの法整備が、これでこれから成立をして行われていくわけですけれども、もっといろいろな問題がこれから出てくると思うのです、それは私たちの予測がつかないような形で。そういったときに、やはりスピード感を持って、先ほど杉浦委員の質問で、民事再生法の部分で大臣は決意を述べられましたけれども、この国際倒産法制という形でもしっかりとやっていただきたい、これをお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。 ありがとうございました。


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