高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。
参考人の皆様方には、本日はお忙しいところをこのように当委員会にお越しいただきまして、しかも貴重な意見を陳述いただきましたことを、改めて御礼申し上げたいと思います。
冒頭、それぞれの参考人の皆様方が、十分間ずつという短い時間での陳述でございましたので、まだまだ言い尽くせない部分もあるかもしれませんので、この質疑を通じながらまた貴重な御意見を拝聴できればと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
さて、今回の独禁法の改正でございますけれども、我が公明党といたしましてもプロジェクトチームを立ち上げまして、都合二十回にわたっていろいろと議論を重ねてまいりました。
そういった検討を重ねる中で、今回の改正案、政府の方でもそれをしっかりと受けとめていただいたと思いますし、その中でも、特にカルテル、入札談合等、こういったものに対する抑止力、これは相当程度強化されたものであると私どもは認識をしております。その意味で、公正かつ自由な競争が促進する、消費者にとっては大変有意義なものになると考えておりますけれども、逆に、中小企業にとっては競争が激しくなって、大変厳しいものになるというような懸念もあると思います。
そこで、まず北城参考人にお伺いをしたいと思います。
今回の改正で、市場原理が有効に機能すると、IBMも大企業なんですけれども、うかうかしていると経営危機が訪れる、こういったことも考えられると思うんですね。アメリカの本社の方ではそういった大変な苦労を乗り越えられたと聞いておりますし、逆に、中小企業であっても、技術力またはそれぞれの努力があれば、新規参入がしやすい。こういった中で、長年、北城参考人は、IT業界というところで、生き馬の目を抜くというか、大変な中で経営の第一線に立たれた。そんな意味で、今回の改正案が公正かつ自由な競争、これは政府案のことで結構なんですが、促進されていくかどうか、こういった基本的なことに関して御意見を伺えればと思います。
北城参考人 基本的には、公正な競争が確保されるということが重要だと思いますし、競争が厳しくなったときに経営が成り立たないということであれば、逆に新しい事業分野に進出する、あるいは経営効率を高めるような経営の施策をとるべきだというふうに思います。そういう意味では、入札談合等に依存して経営をするのではなくて、公正な競争のもとで競争ができるように、企業の経営のあり方を変えるべきだというふうに思います。
そういう意味で、抑止力を高めるための制裁金が今回増額されるということは、基本的には抑止力として働くということで、私は一歩前進だというふうには思いますが、しかし、過去の事例から見ると、まだ課徴金の額そのものは低いのではないかというふうには感じております。
高木(陽)委員 冒頭の意見陳述の中で、北城参考人が、企業というものは社会、国民から信用されて初めて成り立つというような、そういう趣旨をおっしゃられましたけれども、今、そういった部分では、そもそも企業がそういった悪いことをしない、こういう前提であるわけですね。
これは北城参考人が、ことしの九月二十二日の同友会の代表幹事としての定例会見の発言要旨、ちょっと読ませていただいたんですけれども、独禁法強化に伴って企業経営が厳しくなるという意見もあるが、違反をしない限り、課徴金が引き上げられても企業経営には何ら影響がないはずである、法律に反しない企業行動をとることが非常に重要だ、経済同友会は企業の社会的責任を推進する立場からも、法律に違反しない企業活動の推進を期待している、こういうふうにお話しされているんですけれども、まさにそのとおりだなと思います。
その上で、今、今回の改正案は一歩前進だ、抑止力にはプラスになるけれども、まだまだだというような趣旨の御発言がございました。そこで、具体的にお伺いしますが、この課徴金というのは何%程度だといいというか、抑止力としても、または法律としていいのかという、こういった点、御意見を伺えればと思います。
北城参考人 公正取引委員会の事例による分析によれば、過去の超過利潤は一六・五%というふうに伺っておりますので、その程度の水準の課徴金が必要ではないかというふうに思います。
それから、現在、製造業、大企業、あるいはそれ以外の業種、小売、卸、あるいは企業規模等に応じて制裁金の額が違っておりますが、これは過去の営業利益から出た現在の体系を踏襲したものというふうに理解しております。しかし、今後、公正取引委員会には、過去の事例の分析を通して、業種あるいは企業規模に応じて超過利潤の水準がどこにあったのかということをよく調べていただいて、全体として整合性のある課徴金を導入していただければ私はよろしいと思いますが、しかし、そのために時間がかかるということであれば、まず現在の法案の改正をやっていただければというふうに思っております。
高木(陽)委員 続いて、諸石参考人にもお伺いしたいと思います。
北城参考人のお話というのは、大企業たるもの、談合、カルテル体質など、こういうのは一掃しなければいけない。経団連の方もそのようにお考えだとは思うんですけれども、そういった中で、最近、経団連の御意見として、コンプライアンス、いわゆる法令遵守体制の整備、これに向けて本当に努力されている。これはこれで大いに評価したいんですが、ちょっとここで疑問に思うのは、その経団連の意見書というか独禁法改正に当たる御意見の中で、コンプライアンス体制を設けていれば、いわゆる課徴金は減額すべきだという、民主党案も同様な考え方に立っているようでありますけれども、国際競争で勝ち抜いていくためには当たり前の話というか、コンプライアンスをしっかりしていくというのは当たり前の話。企業たるもの、ちゃんとしていかなければいけない。そんなところで、コンプライアンスがあれば課徴金が減る、なくてもしっかりとやっていかなければいけないところなんですけれども、ここら辺のところの関係性について、諸石参考人はどのようにお考えなのか。
諸石参考人 自由競争が自由主義経済、資本主義経済の基本でありまして、そのために公正競争を守る、そのために独禁法を強化する、これは当然のこととして、私どもも支持しております。
ただ、そのために、罰則を強化すればそれだけで済むのかというと、それこそ、芝生に入れば死刑と言ったらだれも芝生に入らない、まあ極端な例ではございますが、やはり違反を抑止するためにはいろいろな方策を総合的にとらなくてはいけない。そのいろいろな努力のうちの一部だけを取り上げるのが問題があるのではないかと申しております。
コンプライアンスということでありますが、今日、企業はコンプライアンスに取り組んでおります。コンプライアンスに取り組んでおりましても、残念ながら違反が生ずるという事態はございます。先ほどどなたかの御意見にありましたが、違反が起こったということはコンプライアンスが失敗したんだから、そういうコンプライアンスは評価に値しないということであれば、これは世界の大勢からいえば違うのではないかと思います。
アメリカの法人処罰に関する量刑基準というのがございます。量刑基準でございますから、法人が違反をした場合の話。それをどう処罰するかということについては、コンプライアンス体制をどう整備していたかということに基づいて、それを中心に量刑基準を決めております。そういうことによって企業がコンプライアンスを進めることを推進しようという考えでございまして、日本でも同じような考え方をとるべきだ。
コンプライアンスをやるのは当然でございます。ただ、そこで違反が起こったからそのコンプライアンスは何の役にも立たないということではなくて、いろいろな事情がございます。そういう中で、どれだけ真摯な努力を続けたか、それも、形だけということではない、きちんとしたコンプライアンスを評価するということは、国際的にもそういう手法が確立しております。そういったものを日本でも取り上げていただきたいと考えております。
高木(陽)委員 続いて、安保参考人にお伺いをしたいと思います。
安保参考人も、弁護士としてというよりも、一消費者としてというお話でスタートされましたけれども、まさに我が公明党も、消費者重視の立場で今までさまざまな活動を展開してまいりました。そういった意味では、今回のこの独禁法の改正というのは、まじめに働いている人がばかを見ない、そういうことが基本だと思うんですね。そういった中で、カルテルなど違反行為をした、厳しく規制していこう、そういうような考え方に立っていると思うんです。
そういった談合、カルテル、悪質的なものに対しては刑事事件としてきちんと取り上げていく、企業の体質も改めてもらわないといけないと思いますけれども、そういった中で、質疑の中でも出てまいりました二重処罰の問題ですね。先ほど安保参考人も、この二重処罰の問題、少しお話しになられましたけれども、これが今回の課徴金の引き上げによって本当にそうなるのかどうか。学説は分かれているという意見もありましたけれども、もう一度その点をお伺いしたいことと、もう一つ、審判手続の見直しですね。
これも、適正な手続の保障という観点から問題ないか、そういった指摘もありますけれども、民主党案の方はそのあたりについてさわられておられない。安保参考人としては、弁護士として被告または原告それぞれの立場で法廷活動をしてこられた方でありますから、今回の見直し案について、適正手続の観点からどのように評価しているか、お聞かせ願いたと思います。
安保参考人 二重処罰の問題につきましては先ほど申し上げたわけですが、さらにつけ加えさせていただきますと、制裁金が余りに重くなるとやはり問題ではないかという議論が確かにあります。ただ、これは本来、二重処罰禁止の憲法三十九条の問題ではなくて、罪刑均衡の原則といいますか、そちらの原則との関係の議論だと理解しております。
確かにこの原則も非常に重要な原則だと思います。ただ、それが憲法三十一条の対象として保障されているのかどうかについては、どうもそこまではまだどの学説もおっしゃっていないように思います。ただ、罪刑均衡の原則というのは、政策的にはやはり考慮されなければいけない原則だと思います。ただ、今回の程度の課徴金の引き上げによって罪刑均衡の原則に抵触するという問題が起きるとは考えておりません。これが第一点の質問に対するお答えでございます。
二番目の、審判手続見直しは適正手続上問題がないのかという点でございますが、既に他の参考人もおっしゃっていますが、第一に、勧告制度を廃止して違反行為の排除措置命令が出せるようにする、速やかにそれが出せるようにするということは、行政処分をする際の通常の手続にのっとりまして十分な反論、反証の機会が与えられている限り、問題はないというふうに考えております。
それから二番目に、排除措置命令と課徴金納付命令が同時にこれからはなされることの問題ですが、これは、不服申し立てがなされた場合には強制徴収はできないという仕組みを今回政府案は採用しておられまして、不服申し立てが最終的に認められなかったときには延滞金を課すという制度であります。この点につきましても、やはり被対象者の争う権利と迅速な違反行為の是正という二つの要請をバランスよく調整しようとした制度であるというふうに、これも日弁連の提言をまとめる際に議論があったわけですが、私どももこの制度が一番ベターであるというふうに考えました。
以上です。
高木(陽)委員 岸井参考人にお伺いをしたいと思いますが、岸井参考人は欧米の制度も大変詳しいというふうにお伺いしておりますけれども、もう一つ、コンプライアンスの問題でちょっとお伺いをしたいと思うんです。
先ほど経団連の諸石参考人からも御意見をお伺いしましたけれども、欧米の方でこういった考え方、コンプライアンス体制、これを強化して課徴金を減額するべきかだとか、そういったような考え方というのは、ヨーロッパまたはアメリカ等々諸外国でどうなっているのか、そこら辺のところをお伺いしたいと思うんです。
岸井参考人 それでは、先ほどの説明につけ加えてお答えさせていただきます。
コンプライアンスの問題ですけれども、まず、今回の改正案とのかかわりでいきますと、今回の改正案の減額制度というのは、広い意味での減免制度というとありとあらゆるものが入ってくるんですけれども、措置減免ということで、調査に全面的に協力した場合あるいは証拠を提出した場合に減免されるということで、これの制度が基本であるということが私の基本的な考え方でありまして、コンプライアンスについて、諸外国でいろいろ、広い意味での減額を認める例というのはあるんですけれども、これは、調査への協力とかということとはまた別で、コンプライアンス体制を構築したこと自体についていろいろ配慮をするということであります。
この場合、先ほど申しましたように、EUなどでは、まあアメリカは刑事罰でちょっと特殊性がありますので、EUの例でお話しさせていただきますが、EUの場合は、コンプライアンスの場合は、まず、減額だけではない。コンプライアンス体制を構築してその後すぐ違反行為を行った場合に、増額した例もあります。つまり、コンプライアンスの構築というのはプラスにもマイナスにも働き得るわけで、その辺は、非常に別な裁量、考慮、こういうのを考えた制度をつくらないとだめなわけです。
それからもう一つは、EUでは、当初はコンプライアンスをいわば促進するという意図もあって、課徴金のいわば安売りを、減額の安売りを八〇年代にしたことがありましたが、いわば効果が余り上がらないコンプライアンスをつくって、やりましたからまけてくださいということをやってきて、最近はこれは非常に厳しくなっておりまして、実際にコンプライアンス体制がきちんと機能しているか、これを非常に詳しく調べなきゃいけないんです。
ところが、詳しく調べるというと、結局、だれが実行して、どこでどういう会議をだれがやって、その内容が上司にどういうふうに伝わったか伝わらないのか、組織内部の意思決定まで全部詳しく調べないと、本当にコンプライアンスが、形だけではなく、あるいは体制をつくっただけではなく、効果があったかどうかということを判断できない。これは、実は日本の制度でいきますと、刑事事件で実行行為者を特定すると同じぐらいの労力がかかってくるわけであります。
ですから、私は、そういう意味で、行政措置としてやるというのは、EUなんかの例と比べても、日本の制度ではちょっと難しい。やるんだったら、私は、刑事罰のところでコンプライアンスを考慮して、罰金を例えば増額するとか減額するとか、そういうようなことからまず始めてみてはいいのではないか、そういうふうに考えております。
以上です。
高木(陽)委員 時間が参りましたけれども、最後に伊従参考人にお伺いをしたいと思います。
先ほどの意見陳述の中で、裁量的制裁金というふうな言い方をされたと思うんですけれども、いわゆる行政制裁金を個別に、裁量的に見ていくみたいな言い方だったと思うんですが、その点について、今まで、公取の実態として、ずっとやっておられた実体験を踏まえて、現実問題としてそれが可能なのかどうか、今の公取の体制も含めて。その点の御意見だけ伺えればと思います。
伊従参考人 まず、裁量制度について言いますと、独禁法の制裁は、企業に対しては、ヨーロッパは行政制裁金一本、それからアメリカでは刑事制裁金一本。ヨーロッパの場合には、ドイツ、フランス、イギリスなどは、個人に対しては刑罰を科しています。
それで、これらの制裁制度の中で、制裁の最高額を決めていないのは日本だけです。どこでも最高額を決めているわけです。ただし、その最高額の中で、今度は、先ほどから話に出てまいった量刑ガイドラインというのをどこでも出していて、それに基づいてやるわけで、裁量のないのは日本だけです。最高額もない。これは世界で特異なあれで、要するに、裁量が誤るんだったら裁量ガイドラインというのをはっきり出せばいいわけなんで、裁量が勝手になるというのは間違いだと思います。
高木(陽)委員 以上で終わりたいと思います。参考人の皆様方、どうもありがとうございました。
|