参考人
(全日本空輸株式会社代表取締役副社長) 大前 傑 氏
(関西大学商学部教授) 安部 誠治 氏
(全日本交通運輸産業労働組合協議会顧問・明治大学商学部教授) 戸崎 肇 氏
高木(陽)委員
公明党の高木陽介でございます。
参考人のお三方には、お忙しい中をわざわざ本委員会まで足を運んでいただきまして、また貴重な御意見をお話しいただきまして、本当にありがとうございました。
参考人の先ほど陳述していただきました意見に沿いまして、さらにお伺いをしたいと思うんですが、まず安部参考人にお伺いしたいと思うんです。
今回の法案について、お三方とも基本的には賛成だというふうに意見表明もしていただきまして、その上で、さらにそれを高めていくための要望ということで、安部参考人が三点についてお話しいただいたと思います。
その中で、特に被害者の対応を事故調がやっていくべきであろう、また米国のNTSBではそういうセクションもある、こういうお話をいただきましたが、米国の場合はどこまで被害者対応をしているのか、また、もし日本でやる場合、特に昨年、福知山線の事故のときに、テレビを初めとするメディアが、西日本がおわびをしに行ったその状況というのをいつも報道されて、それを見て、被害者の対応、その心情を考えた場合に、そう簡単にはいかないんじゃないかとも思うんですが、この点についてお願いいたします。
安部参考人
アメリカのNTSBが被害者の対応を始めるようになったのは七、八年前からでございます。そのためにアメリカのNTSBの中に一つの局を設けまして対応するようになっているわけですが、つまり、例えば航空機事故等が起こりますと、遺族が現場に参ります。参りまして、そこで、例えば、遠くの地でしたら、ホテルの予約をどうするかとか、こういったさまざまな問題が起こります。それから、死亡事故ということになりますと、遺族はパニック状態に陥りますから、例えばカウンセリングの対応も必要じゃないかというふうに思います。こういったことをNTSBは、ある重大事故が起こったときに専門の係員を派遣して遺族対応に当たらせるということによって、かなり初期段階で遺族に対するケアがなされているわけであります。
翻って、我が国の場合を見ますと、例えば昨年の福知山線の事故の場合ですが、事故が起こりまして、近くの体育館で御遺体が安置をされます。そこにJR西日本の社員の方が遺族対応をされるわけですが、これもやはりいろいろな行き違い、遺族の方は遺族の方の思いがあります、社員の方は十分そういうことに対応しておりませんから、対応の仕方も粗相があるわけでありまして、そこで非常にぎすぎすした関係が生まれる、遺族はそのことでなお悪感情を持つというようなことが起こります。
ですから、私は、この場合は加害企業と言ってもよろしいと思うんですが、加害企業がそういう遺族ケアをして、御遺体の処理だとかこういった遺族のお世話をするのはやはり無理があるんじゃなかろうかというふうに思いまして、これをどこがやるかということで、適当なところでいえば、やはり私は事故調の中にもう一条追加して入れていただいて、事故調にスタッフをもう少し増員をしていただいて、そういう大規模な災害が起こったら、そこから行った職員が御遺族の対応をする、そこが窓口となって事業者側にも連絡等をして、しかるべき措置をとっていくということが遺族のケアという点では望ましい方向ではないかというふうに理解をしております。
以上でございます。
高木(陽)委員
続いて、大前参考人にお伺いしたいんです。
全日空、先ほどのお話の中にも出てまいりましたが、雫石の事故以来、こういった安全の部分では全社挙げて取り組んできた、そういう流れの中で、冒頭の意見陳述の中で、二十年前からヒューマンファクターズ訓練というものをしてきた、こういうお話がございました。まさに、この前の参考人質疑のときには、ヒューマンエラー、これは絶対になくならない、こういう前提に立ってリスク管理をしていかなければいけないというようなお話があったんですけれども、そういった中で、ヒューマンファクターズ訓練というのはやはり重要だと思うんですね。
この訓練のあり方、また具体的内容について、どういう形でやって、社内で見ていてどういう効果があるのかというところ、そのことをお聞かせ願いたいと思うんです。
大前参考人
お答えします。
先ほど申し上げたように、二十年前から、まず乗員の訓練から始めまして、客室それから整備部門で実際にヒューマン訓練をしております。今の御質問の、それをどういう尺度で評価して効果を見ているかというのは、これは極めて難しいことで、我々もまだ結論を持ち得ていないというのが現状です。
ただ、今御指摘いただいたことは極めて大切なことだと思っていまして、最近、乗員の世界にも、今やっています訓練が、スレット・アンド・エラー・マネジメントという訓練をしています。要は、操縦しているときに、いろいろな要素があって、例えば、ウエザーだとか飛行機だとか、CAさんだとかお客さんとか、いつでも不安全要素がそこから発生し得る。それをいかに心の準備をして、しっかりそこを見抜けるか、その不安全要素をエラーにいかに結びつけないかという訓練をしているんですね。そういう意味では、訓練そのものを絶えず進化させている中でエラーを減らしているということが一点。
それから、エラーをするときに、だれでも起こしやすいエラーというのがありまして、潜在的に起こしやすいリスクを状況から外すということ、リスクをヘッジさせる、取ってしまうということが極めて重要ですね。我々はマニュアルで仕事をしていますので、マニュアルの中で、読みやすいだとか勘違いしないことだとかいろいろなことで、だれでも陥りやすい問題を可能な限り除去するとか、そういうリスクを減らしていくということも、その両面からヒューマンを減らすために必要だと思っております。
高木(陽)委員
その上で、さらに大前参考人に伺いたいのは、安全情報について、特にインシデント等のそういういろいろな問題が起きたときに、その情報の分析、評価、これが重要であるというお話をされたと思うんですが、その上で予防対策をとっていくんだということですね。
問題は、分析の仕方ですよね。いろいろな小さなインシデント等が集まってきました、さあそれが、原因はいろいろあるでしょう。そこの分析の仕方というのは、これはまさに社内でもやらなきゃいけないんですけれども、逆に第三者にそういうのをしっかりとやらせていくシステムというのも必要なんじゃないかなとも思うんですが、その点はいかがでしょうか。
大前参考人
御指摘いただいたことを大いに参考にさせていただきたいと思っています。
ただ、分析するというのは極めて難しくて、本来であれば、根源的な部分はしっかり原因をつかんでやればいいんですけれども、現象的な面で原因づけしてしまうとか理由づけしてしまうというのがあって、何かあったときの分析というのは極めて難しいんだということに我々は絶えず頭を悩ませているということです。今の御意見は参考にちょっと持ち帰らせていただきます。
高木(陽)委員
何でもかんでも外部でやればいいということではないんですけれども、やはり安全という問題は、絶えずあらゆる角度からチェックをしていくというのが一番必要なんであろうな、こんなふうにも思っているので、ちょっと意見を申し上げさせていただきました。
続いて、安部参考人にまたお伺いしたいんですが、先ほども質問が出てきましたけれども、事故調と警察捜査の関係ですね。
私も実は、新聞記者、社会部の記者をやっていまして、警察の取材というのを何度も何度もやってきて、そのときにやはり、捜査上の秘密、もっと言えば、立件をしなければいけないということで、裁判で訴訟にたえ得るだけの証拠集めをし、逆にそれが事前に出てしまうと手を打たれてしまう、こういった考え方が警察にはあると思うんですけれども、そういった中での、先ほどは事故調と警察捜査を分けるべきだという御意見でした。
しかしながら、今、日本の現状で、原因、そして責任、過失、こういった問題をとらえていくときに、そんな簡単にはいかないなと。幾つかの条件があるということで、また賠償の問題等もお話しされましたけれども、もう少しそこをお聞かせ願えればと思うんですが。
安部参考人
先生御指摘のように、非常にこれは微妙な問題がございますのですが、警察が立件をした場合、膨大な証拠を集めるわけです。その場合には、法令違反と予見可能性というようなことが立件の大きな柱になってくると思うんですが、運輸の事故というのは実は法令が想定していないところで起こるわけであります。
例えば、昨年の福知山線の事故のように、あの運転士の暴走なんというのは、法令はどこにも想定していないわけですね、予想外で起こってしまうわけです。そうすると、責任が問えないという問題が起こって、高い捜査能力を発揮して警察がいろいろな証拠を集めても、このことが結局お蔵入りになってしまって、運輸の再発防止のための予見として使えないという非常に残念な事態になるわけです。
これがいかにも残念で、ですから、警察捜査が再発防止に役立っているかというと、私は随分限界があるというふうに思っておりますので、やはり再発防止、運輸の安全性のためには、警察捜査とは別の枠組みをつくっていく必要があるだろうというふうに思っております。
その際、先ほども申し上げましたように、それをつくっていくためには、やはり幾つもの超えるべき障害があるんじゃないかというふうに思っております。
その一つが、やはり現行の、責任を問うというのをどのレベルで見るのか。これは、やはり遺族感情の問題がございますし、もろもろのいろいろな、世論の成熟という問題もあるのではないかというふうに思いまして、そのレベルの問題。
それからあとは、そうなった場合に、では、責任をどこで負うのかという場合、責任ということになると、大変残念なんですが、最後はお金、賠償で往々にして決着がついていく、刑事事件を問わないとすれば。そうしますと、事業者の側がそういったものに応じていけるようにするためには、やはり保険制度といったものの整備も必要ではないかというふうに感じているところでございます。
いずれにしましても、運輸の再発防止をしていくための条件づけとしては、そこをどういう議論をして乗り越えていくかというのが大きな課題として残っているというふうに感じておりまして、実は、法律の専門家等を含めまして、今、そういう議論がこの一、二年、急速に起こってまいっております。
高木(陽)委員
時間が限られているので、最後に戸崎参考人にお伺いしたいんですが、参考人が、規制緩和、この流れは認めながらも、適正な競争が必要であると。この適正な競争というのはどんなものかというのは難しいと思うんですね。
これは、安部参考人もお話があったんですけれども、外注をしてしまうと、逆に外注が整備なんかで多くなってくると、自社の整備の能力が衰えてくる、こういうような指摘もございました。
もう一つの角度でいうと、経営が安定していないとそれだけのお金をかけられない、安全に対してコストをかけていくことができない、しかし、逆に、そこを無視していくとまた経営自体も不安定になってくる。難しい関係だと思うんですね。
こういった部分での適正な競争というのはどういうふうに考えたらいいのかというのを、戸崎参考人にお伺いしたいと思うんです。
戸崎参考人
ありがとうございます。
まず前提となるのは、市場はすぐに変わっていくということです。ですから、規制緩和が、最初に想定した状況では起こり得ないことが、当然見えなかったところと、あとは、後の事態の変化によって変わってくるというところはあると思います。
見えなかったところというのは、やはり安全に対する投資というのが思ったよりもなされなかったという状況があり、例えば、需給調整規制を外せば、経営者は、適切な判断ではなく、実際に供給をふやし過ぎてしまったというところがある。
したがって、私が申し上げたいのは、規制緩和というのは、すべてを想定することは無理だし、実際に環境は変わってくるものですから、それに伴って適切なタイミングで見直していくことが必要であろう。したがって、その見直しのタイミングというのをきちんとスケジュール化をして、そして、だれもがある基準に達したときには見直すような透明なシステムをつくっていくこと。すなわち、適正というのは、これは理想論ではあるけれども、大抵そういったものを目指していかなきゃいけないということでお話をさせていただきました。
以上です。
高木(陽)委員
時間が参りました。
今最後に戸崎参考人もお話があったように、適正に見直していくことが必要だという。今回の法案も、今まで、事故が起きてきた、その中での運輸の安全ということで、事故が起きるたびにやはりチェックをしながら、そしてよりよいものにしてきていると思うんです。
そういった意味で、きょうお三方の参考人も基本的にはこの法案に賛成だという御意見を賜ったと思うんですが、やはりこれで完璧だとは思いません。やはり理想は高く求めながらも、ただ現実は、先ほどから申し上げているように、さっきの警察の捜査と事故調の問題もそうですけれども、なかなか現実にはそう簡単にはいかない部分がある。そういったものを今後も委員会としてもしっかりとチェックしながら、さらによりよいものをつくっていくということ、こういうことを確認していきたいと思います。
以上で質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
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