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第163回国会 衆議院会議録
2006(平成18)年04月21日
 
 


第164回 衆議院 「国土交通委員会」15号

 

考人
 (国際基督教大学教養学部国際関係学科教授)八田 達夫 氏
 (前法政大学大学院人間社会研究科教授)  本間 義人 氏

 

高木(陽)委員

 公明党の高木陽介でございます。
 本日は、両参考人におかれましては、貴重な御意見を述べていただきまして本当にありがとうございます。
  住生活基本法の審議がスタートいたしまして、特に、この問題というのは本当に国民生活に大きなかかわりを持っている問題ということで、きょうも、前回もそうでございますけれども、公団住宅の自治協の皆様方もずっと傍聴しておられまして、やはりそれぞれの生活にもかかわる問題ということで、また質疑をさせていただきますけれども、貴重な御意見をさらに拝聴したいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
  私も座って質問させていただきたいと思います。
  まず、八田参考人にちょっとお伺いをしたいんですが、先ほどからずっと御意見をお伺いして、今の住宅の問題というのが、量から質の向上になってきている。そういう移行が求められている中で、今回この法案、この住生活基本法という法律をまず基本法としてつくって、これからさらに次々と施策を打ち出さなければいけないんですけれども、量から質への転換という考え方の中でこの法案がどの程度達成し得るか、ここら辺のところをどのようにお考えか、まずは伺いたいと思います。

 

八田参考人

 今までの五カ年計画では、量から質への転換を、公が関与する以外の普通の市場に対して及ぼすことはできなかったと思います。今度の基本法というのは、公のお金が出ているところだけじゃなくて、すべての市場に対して情報の非対称性をなくして充実させていく、そういう意味での質の改善を非常に広範囲に図るということを中心的に打ち出しておりますから、これは従来のものと比べて抜本的な改革である、そういうふうに思っております。

 

高木(陽)委員

 続いて、今度は本間参考人の方にお伺いしたいんですが、本間参考人は毎日新聞で編集委員までやられて、私の大先輩になるということで、そういった現場をずっと踏まれてきて、さらにその上で今回この住宅問題に関してはさまざまな学識を持たれた、こういう経緯の中で、私は、現場を歩いていて、今の住宅、特に公営、公団、セーフティーネットとしての住宅というものが今のままで果たしていいんだろうか、こういった疑問もすごくございます。
  その中で、国民の居住水準を保障するということは福祉国家の基盤である、こういうようなお立場だと思うんですけれども、今回の法律というのは、その先生のお立場でどのように評価しているのか、もう一度お伺いをできればと思いますので、本間先生よろしくお願いします。

 

本間参考人

 私は、今の高木先生の御質問にお答えする材料の一つとして、さきに公明党が住宅基本法案というのを提出したことが、七回出したことがあるということを申し上げましたが、それを改めて振り返ってみたいと思うんです。これはなかなかいい法案だったんですね。なかなかいい法案です。
  例えば、第一条、目的ですね。国民の住生活の安定向上が国民生活における緊急かつ重要な課題である、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与するのが目的だと。それから、第二条から第四条では、すべての国民に対し健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を確保し、国民の住生活を適正な基準に安定させるための施策を展開する必要があると。それから、第七条から九条では、健康で文化的な生活を営むに足りる適正な基準というのを設定しておりまして、私が申し上げたあるべき住宅基本法の要素というのをすべてこれは取り込んでおるんですね。
  これはなかなかいい法案でありまして、こういう法案をつくられた公明党の方々が、今回、政府・与党として、住生活基本法案にもちろん賛成の立場をとっておられるのは不可思議でしようがないわけです。
  なぜ、では今もってこの公明党案が生きているのか、この法案が生きているのかと申しますと、例えば、量より質だと言います。しかし、私が先ほど来指摘しております最低居住水準未満世帯の解消というのは、一九七〇年代の第三期住宅建設五カ年計画で目標として掲げたものですね。一九八五年までに全部解消するんだというのがその趣旨でありました。ところが、その第三期住宅建設五カ年計画で掲げられた目標は、それから四半世紀以上たっている今日もなお、先ほども申しましたように、首都圏では一三%強が達成していないという状況ですね。
  だから、量より質、一面そういう面もあるけれども、量も質もという時代ではないか。量も無視することはできない、かなり重視しなければならない要素であるということを私は申し上げたいと思うんですね。仮にこの公明党案が、一九六九年から一九九一年まで二十年以上の間、七回提案をされているんですが、これが仮に成立していたら、もう随分とこの住宅事情というのは変わってきたんじゃないかというふうに考えるんですね。
  そういう意味で、私は、高木先生にはぜひ、北側大臣がかつて説明されたこの住宅基本法案、固執されて、政府案をよりよいものにしていただきたいというふうにお願いする次第であります。

 

高木(陽)委員

 今、公明党のこともずっと御指摘をいただきまして、先ほど先生が北側大臣が提案されたとおっしゃられましたけれども、北側大臣のお父様が、建設委員長も経験されて、その時代にずっと出されたという経緯だと思うんですね。
  私どもも、今回の法案について提案をする前までいろいろと議論を重ねてきて、今先生のおっしゃった、量も質もだ、まさにそのとおりだと思います。その上で、今度は、最初に一〇〇%完璧に実現できる、これは理想だと思いますけれども、今の財政事情等々も含める中で一歩ずつ変えていく、それも必要なことであろうなと。これが今私どもの立場だということをまず申し上げておきたいなと思います。
  その上で、次に、八田先生が、先ほどの冒頭のお話の中でミスマッチの話をされました。例えば、単身の老人また御夫婦二人で住まわれている、しかし、それがすごく広い。一方で、ファミリー世帯、子育て世代が狭いところにいる。こういう現状というのがなかなか解消されていない。ただ、ストックとしてはそれだけの量がある。こういうような現実の中にあって、どうやってこのミスマッチを解消させるか。では、今住んでいるところをかわってくれ、かわっていく、これもなかなかそう簡単ではないというような中での、これのプロセスというものをどういうふうにしていくかということを八田先生にちょっと伺いたいなと思います。

 

八田参考人

 今おっしゃった問題は非常に大きな問題で、ある意味では、象徴的に、日本の住宅ストックがいわゆる中古市場として余りうまく活用されていないということだと思います。
  米国では、確かに、建築戸数は日本ほどない年も多いですけれども、中古住宅の取引というのは非常に活発に行われている。
  その理由が何かということですが、一つは、税制のことがあると思います。アメリカの場合に、老人の御夫婦が家を売却された場合に、老人の場合には譲渡益税を免除されるということがございますから、非常にスムーズに売却できるということであります。それから、売却した後すぐ新しい家を買わなくても、十分な借家の供給がある、それも売りやすくしていることだと思います。それから三番目に、もうそういうふうに中古住宅があるのが当たり前という状況では、家を建てるときに、人に貸すためのことを考えて非常に標準的な家をつくる。それで、住宅の情報についても整備されている。
  日本では、そのどれもがないわけですから、ある意味では、譲渡益税のことももちろん今はできないわけですし、アメリカの制度がいいかどうかもよくわからない。
  二番目の、借家にして人に貸せるということ、これは、定期借家ができたし、ある程度の大きさのところにはかなり定期借家の普及が始まっていますから、これをよりよく、使いやすくすることによって、老人の方がそれを人に貸して、売るのはちょっと難しい、でも、人に貸して移動できるというような仕組みを整備する必要はあると思います。
  それから最後に、やはり中古の住宅を借りる方も買う方も非常に不安ですから、そこの情報の整備をしていく。そういう情報を登録していくというのがもっと見やすいようにするとか、それから診断をする人たちを支援していくとか、そういったようなことが必要なんではないかと思います。

 

高木(陽)委員

 本間先生の方にお伺いをしたいと思いますけれども、公的な住宅、先ほどから、量と質、量もまだ足りない、量もしっかりしていかなきゃいけないという御意見だったんですけれども、その中で、家賃の問題というのは結構あるなと思うんですね。
  公的な住宅の中で、公営そして公団、公社、特に公団住宅の経緯を見ますと、当初は、昭和三十年代、これは中堅所得層を対象として、いわゆるストックが足りないということで供給をしてきた。そのころは、働き盛りの方々が入居をされて、そして家賃も、ある意味じゃ余裕はなかったかもしれませんけれども、しっかりと払っていける。
  ところが、これが定年を迎える、高齢者になられて、いろいろなニュータウンも今高齢化の問題というのはすごくあるんですけれども、そういった方々がそのまま公団に住み続ける、もしくは公営住宅、公営住宅というのは、大分幅が広がってきましたけれども、当初は低所得者をターゲットにしてやってきましたけれども、そういう部分での選択肢、例えば公営住宅と公団住宅のその間に入るようなものがない。そういう選択肢が少ないという現実もあるんじゃないかなとは思うんですけれども、その点についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

 

本間参考人

 今高木先生の御質問、家賃の問題を中心に考えますと、公営住宅、特に私は都営住宅の場合を言いたいんですが、都営住宅あるいは公団住宅、現在の都市再生機構の住宅でありますが、この家賃問題というのは、高齢者あるいは中低所得者にとっては非常に危機的な状況になりつつあるんじゃないかというふうに感じております。
  といいますのは、公営住宅の収入超過者、あるいは公団、都市再生機構の住宅は全部そうですが、その家賃が、近傍同種家賃並みにするということで、近くに立地する民間の賃貸住宅の家賃並みにするということですね。従来は、社会政策上、公団、都市再生機構住宅も公営住宅も公社住宅も、一般の民間住宅家賃よりも安く抑えられてきております、政策家賃として。
  ところが、近傍同種家賃になって民間と同じになるということで、先ほど八田参考人も申されたとおりに、例えば立地を優先するとかいう傾向が出てきておるわけですね。立地を優先するという傾向は、まあ、私はそれはそれでいいとして、問題は、そこに住み続けなければならない人々、特に高齢者、年金受給者あるいは低所得層、これらの方々が民間並みの家賃にどこまでたえられるかという問題が起きておるわけですね。
  現に、東京都下の大ニュータウンを抱えた市におきましては、このニュータウン対策、ニュータウンの居住者対策が福祉政策の最重要課題になっているということがあります。もちろん、それは、五階建ての階段を上りおりするのは大変だ、そういう物理的なこともある。居住面積が狭くなってきておる、老朽化しておる、そういう物理的な面もありますが、実は、物理的な面よりも、生活保護世帯ぎりぎりの線で家賃を支払わざるを得ない層というのが年々ふえてきているということなんですね。
  そういう意味で、果たして公的賃貸住宅の家賃が近傍同種家賃でいいのかどうなのか。恐らく、住宅政策本来のあり方としては、近傍同種の、つまり民間住宅の家賃を公的賃貸住宅の家賃並みに下げていく、それが政策だろうと私は思うんですね。ところが、逆なんです。だから、問題がこれから大きくなるだろうと私は予測しております。
  だから、政策のあるべき本来の趣旨を逸脱して、公的賃貸住宅の家賃まで民間並みにして、それが市場化だ、これでいいのかどうなのかということを問われているんじゃないかと思うんですね。

 

高木(陽)委員

 今の本間先生の御指摘の、公的な賃貸住宅が近傍同種、市場家賃でいいのかどうか、まさに私もそのところはずっと感じておりまして、例えば今申し上げたような、若いとき、本当に働き盛りのときは、家賃の部分というのはそんなに大きな負担にならない。ところが、高齢になって年金生活者になる、そういったときに逆にこれが、今までは公的賃貸ということで安い家賃だったのが、急に、ここに来て、収入が減ったときに市場家賃になってくる、こういったアンバランスがあるというのは事実だと思うんです。その点について、やはりこれは政策的にもしっかりと対処していかなければいけないと私も強く感じております。
  あともう一つ。時間も限られておりますので、八田参考人に、これが最後の質問になるかもしれませんけれども、住宅政策ということは、もちろん今回、住生活基本法ということで国が主導してやっていくわけでありますけれども、やはりそれぞれの地域の事情を勘案しながら構築すべきだな、こういう考え方もあると思うんですね。住宅政策における、都道府県さらには市町村、ここら辺の役割分担ですね。
  今、三位一体改革という流れの中で地方分権が進む中で、例えば住宅の補助金というのがなくなっていく、でも、その分交付金という形で国からしっかり支援しようという流れはあるんですけれども、やはり、都道府県さらに市町村、財政事情を考えると、この住宅政策というのはなかなか力を入れられない部分もある。そこら辺の役割分担についてどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。

 

八田参考人

 今の、地方と国の役割分担を住宅政策においてどういうふうに行うかというのは非常に重要な問題だと思います。
  例えば、まちづくりをどうするか、あるいは、ある駅の周辺を病院も整備し、それから介護の施設も整備し、老人のためのアスレチックセンターも整備し、老人が住みやすいような地域にしていくというのは個々の事業者ではとてもできませんから、そこの地方が先導してつくっていく、あるいは住民の主導でもってつくっていく、そういうことが必要だと思います。
  一方、先ほどの、公営住宅がもともとは低所得者層に大きな重きを置いていたのにもかかわらず、今、本間先生も御指摘になったように、非常に自由に地方でもって使えるようになった。それは自由に使えることでいい面があるんですが、本間先生が御指摘になったように、それでは低所得者への補助はどうなるんだということは明らかに大きな問題だと思うんです。
  ここが、実際の使い方、低所得者に限って使うのならば、その使い方を公営住宅にするか家賃補助にするかは地方に任せるが、必ずこれは低所得者にしか使っちゃいけないよというお金を国が出さない限り、地方はそれを十分に低所得者に使おうというインセンティブがないんですね。だから、私は、そこは国の役割ではないかと。その枠組みをつくる、お金を限定して配付する、そこは国の役割ではないかというふうに思っております。

 

高木(陽)委員

 時間も参りました。
 まだまだお伺いしたいことはたくさんあるんですけれども、住宅問題というのはストックの問題だけではなくて、また今、量から質だとか、いろいろ言われておりますけれども、一番大切な視点というのはそこに住んでおられる方だなと。その方々が本当にそこで生活をしていける、または、そういった希望を持ってやっていけるのかどうか、こういった視点をしっかりと持っていかなければいけないと思いますし、この住生活基本法というのが、基本法でございますから、今お二方の先生に御指摘いただいた部分もしっかりと勘案しながら、政策の一つ一つの実現というものに努力していくこと、このことを私たちもしっかりと決意をしてまいりたいと思います。
  以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

 

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