参考人
東京大学大学院工学系研究科教授 河内 啓二
社団法人日本航空技術協会会長 久保 哲也
定期航空協会理事長 辻村 邦康
航空アナリスト 杉浦 一機
高木(陽)委員
公明党の高木陽介でございます。
本日は、参考人の皆様方には、当委員会にお越しいただきまして、また貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。今回のボンバルディア社のDHC機の事故について、国民がさまざまな不安を抱いている。そういった中での当委員会の参考人質疑となっておりますので、先ほどからさまざまな御意見を述べていただきまして、重複する部分もあるかもしれませんけれども、よろしくお願い申し上げたいと思います。
まず、今回の事故原因、これは事故調が今調べているさなかでございますけれども、先ほどの冒頭の意見陳述の中で、杉浦参考人が、製造過程におけるミスと推察できるというようなお話もございました。
このことに関しまして、特に、今回の機種は高性能をセールスポイントにしている機体で、前輪の出し入れというのは安全の根幹にかかわると思うんですね。しかも、幾つかの手段が試みられたにもかかわらず、すべて効き目がなかった。今回の事故は極めて重大な問題をはらんでいると思うんです。
私は素人なので、ここら辺のところは専門家の先生方にもお伺いしたいと思う中で、河内参考人と久保参考人に改めてお伺いをしたいと思うのは、設計や構造に基本的な問題があったのではないか、素人としてはどうしてもそういうふうに考えてしまうんですけれども、この点についての御意見をお二方にまずお伺いしたいと思います。
河内参考人
航空機というものは、つくったとき、図面に基づいて、各国の当局がちゃんとサーベイをいたします。型式証明をとる前にそういう審査がかなり厳しくありますので、設計図どおりあるいは考えた構造どおりにできていれば問題はなかったのではないかと私は考えております。
ただ、先ほど久保さんからお話がありましたように、実際運航を行っていろいろなトラブルが出てきた場合に、微小な修正を行うことはもちろん多々あります。
久保参考人
設計とか構造の問題かというふうに言われますと、今、世界は、カナダだろうとアメリカだろうと日本だろうと、基本的な設計の基準というのは、まず共通の基準で設計をされていて、それに基づいて、私が見ている限りでは、カナダは直接知りませんけれども、日本の場合もアメリカの場合も厳しい設計の審査がされますので、それをきちっとクリアしているということからして、設計とか構造の基本的な問題とは思いません。
先ほども申しましたように、きちっとボルトが締まっていれば起こらない問題ですから、製造品質とかそっちの方はちょっとまだ原因はわかりませんけれども、設計、構造の問題というふうにはちょっと思えないと思います。
高木(陽)委員
設計の段階、これはまたさらに調べていかなければいけない問題だと思うんですけれども、あと、製造過程での品質管理上の問題、例えば製造ラインでのコストダウンだとか、または品質管理に及ぼしている影響、そういった可能性はないのかということについて、これは河内参考人、久保参考人、杉浦参考人にちょっとお伺いをしたいと思うんです。
河内参考人
コストダウンと品質管理の問題は相反する場合も多いんですが、私自身、ボンバルディアの会社の情報を持ち合わせておりませんので、ボンバルディア社においてコストダウンが品質管理にどう影響を及ぼしたかというのはちょっとお答えしかねます。
久保参考人 私も、自分で見たわけではないので、ボンバルディアについては何とも申し上げようがないんですけれども、一般論としましては、コストダウンをすると品質が下がるじゃないかということの御心配というのは一般的に非常にあるわけなんですけれども、やり方の工夫によって、コストダウンしつつ品質も上げるということを実現してきたケースもいろいろある。特に、自動車なんかの場合は非常に顕著だと思うんです。
飛行機の場合も、実際に今やっている人たちは、同じやり方でただ人だけ減らしているということじゃなくて、やはりそこにいろいろ工夫をしながら人も減らしてやっているのではないかなというふうに思うんですけれども、ちょっと結果がよろしくないので、ボンバルディアについてはちょっと何とも申し上げられません。
以上です。
杉浦参考人
やはり製造上の品質管理の問題というのは、日本の工業でも今問題になっているかと思うんですが、これは航空機工業に限らず、いろいろな機械工業全般に起こっている問題でありまして、非常によく内容のわかったベテランの方をリストラしてしまったりとかいうような問題も響いているというふうに聞いております。
ボンバルディアに関しましては、先ほどちょっと御説明しましたように、〇三年から〇五年にかけて大変経営危機に陥りまして、この段階で製造現場の士気が下がっていたということと、それから大胆な改革をやった、これによって混乱があったという情報があります。その程度ですが、やはり生産量を三倍にするとか、あるいは検査員の数を大幅に減らして一五%から七%に削減をするということは大変な改革だと思うんですね。これが品質管理を伴ってできていればいいとは思うんですが、ちょっと現場は見ていませんけれども、こういう過程に無理があったんではないかと推測ができるのではないかなというふうに私は思います。
高木(陽)委員
久保参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど陳述の中で初期トラブルのお話をずっとされたんですけれども、これも、どうしても素人的に見ますと、航空局の技術部長が冒頭に、七十九件のトラブルがこれまである中で、数としてはこれぐらいが初期トラブルとして当たり前なのかどうか。どうしてもボンバルディア社の場合、減少しないでずっとそのまま来ているというような印象をぬぐえないんですね。そういった点の御認識をもう一度お伺いしたい。
もう一つは、この初期トラブルで、YSのときはかなりそこで改善をしていった。ところが、一歩間違えれば、これはもう本当に初期トラブルの段階で大惨事になる可能性もあるわけですね。こういった点について、メーカーまたエアラインの整備の方と、さらに国交省等も含めて、いろいろと対応していかなければいけないんですけれども、今回の高知空港の例を見ても、もしあれが、胴体着陸が失敗をした場合、もう大変な事態になっていたでしょうし、そう考えると、初期トラブルだということだけで果たして解決できる問題なのかどうか、この点もお伺いをしたいと思うんです。
久保参考人
まず、初期トラブルという言葉の定義というかイメージなんですけれども、これは明確な定義があるというふうには思いません。ただ、私が申し上げている初期トラブルというのは、新しい型式が出てきたときにいろいろな問題がある。これは、このボンバルディアの飛行機だけじゃなくて、過去に私たちが使ってきたいろいろな飛行機、全部ですね。
先ほど、初期トラブルがおさまってから使えばいいじゃないかという御指摘もありまして、そうすれば、それは結構なんですけれども、日本という世界第二の経済大国というようなことであれば、やはり最新の飛行機を、設計され、完成したらすぐ採用していく。今度の787なんかですと、ローンチして、最初に受け取るわけですね。そういうふうにやっていかなきゃいけないし、777とか、みんなそうやってきました。そうすると、ボーイングがつくった飛行機でも、最初はもう次から次へとトラブルがあるわけですね。
ちょっとイメージ的に申し上げますと、例えばある新しい新型機が完成した。型式証明をとった。最初の年は二十機エアラインに引き渡したとしますね。ところが、その最初の二十機というのは、普通は設計の基本的な部分が問題ではなくて、いろいろな細部の詰めの部分で次から次へと問題が出てくる。そうすると、今回でいえば、脚の問題もそうですし、ステアリングだ空調だと出ていますけれども、同じように出てくるわけですね。そういうトラブルが、個数というよりは、私が申し上げているのは種類というか、百種類のトラブルというか、脚で二種類とか空調で二種類とか、そういうことで、最初に受け取った二十機については百種類のトラブルがあったとしますね。そのぐらいはすぐあるんですね、実際は。そうすると当然、エアラインはクレームで、こんなの何とかしろ、こう言うわけですね。そうすると、メーカーも当然、そんなのを使ってくれと言えないから、一生懸命取り組んで、細かいところのリファインメントというんでしょうか、設計の改善をやりまして、それで、例えば二年目にまた二十機引き渡すとしたときには、その二年目に引き渡す二十機にはその改善を織り込むわけですね。
ただ、百種類のトラブルがあった場合に、一気に全部解決というのはなかなかできませんから、例えば五十種類は解決した。そうしますと、二年目に引き渡す二十機は、一年目は百種類あったトラブルが五十種類に限定されるわけですね、五十種類は解決した。そのときに、一年目の飛行機はそのままトラブル続きなのかといえば、普通はそうではなくて、二年目に渡した飛行機と同じ改修を、サービスブレティンとかそういう改修指示でもって、さかのぼってエアラインに実施しなさいよということで、エアラインは当然そういう改修をやるわけですね。そうすると、二年目には、一年目に受け取った二十機と二年目に受け取った二十機で四十機あるんですけれども、四十機の水準は五十種類のトラブルを抱えたオペレーションになるわけですね。
今度、メーカーは、まだ五十種類あるというのでは大変ですから、さらにいろいろ努力して、少し難しい問題が先に延びたとして、三十種類は解決した。そうしますと、三年目には、今度は、二十種類の問題は残っているけれども、八十種類は解決した飛行機を二十機引き渡す。エアラインは、一年目に受け取ったもの、二年目に受け取ったものを改修しますと、三年目の六十機というのは二十種類のトラブルを抱えている。これを、メーカーが頑張って、とうとう全部解決して、四年目に引き渡した飛行機は、もうそういう初期トラブル的な設計の問題はなしの飛行機を引き渡した。一年目、二年目、三年目の飛行機にもその改修をやったというふうにしますと、四年目には、初期トラブルの問題がほぼ解決した、安定したフリートになる。こういうイメージを持っているわけですね。
ただ、では四年目になって初期トラブルが全部解決したら故障は起こらないのか、ふぐあいは起こらないのかといったら、それはありません。やはり飛ばしているからにはいろいろなトラブルというのは出てくるんですが、それが初期トラブルみたいな、あるところに集中して何回も繰り返し出てくるというようなことではなくて、いろいろなものがぽつぽつ出てくる。こういうものに対応していくというのは、これはもう当然整備の役割ですからいいんですけれども、そういう意味で、やはり技術改修をしていかないと、それを古い飛行機にも及ぼさないと、四年たっても最初の年にデリバーしたのと同じ。これは新品の飛行機ですよね、新造機が出ている。新造機、新造機、新造機なんだけれども、設計が改善されなかったら、四年目に引き渡される飛行機も百種類のトラブルを抱えたものが出ちゃう。
そういうことは、何となくこれを見ますと、もう六年、七年たっているにもかかわらず、今私が申したぐらいのペースで改善ができていればこんな問題はないと思うんですけれども、残念ながら、技術的な対策の改善のペースが遅いがために、相変わらず最初の年から発生していたような問題を六年、七年引きずっていて、それを改修して改良しようと思っても、そのサービスブレティンさえ出ていない。こういうことではないのかなというふうに思います。
〔西銘委員長代理退席、委員長着席〕
高木(陽)委員
あと、辻村参考人の方にもお伺いをしたいと思うんです。
陳述の中で、航空業界全体の安全意識をより一層高めていくために会員各社の社長を委員とする安全委員会を新設している、そこでいろいろと情報の共有等々をやっていると言うんですが、もちろん経営のトップがそういう安全意識を持つということはもう本当に必要なことであると思うんです。ただ、やはり現実問題として、各エアラインの整備の段階での情報の共有、これは本当に重要ではないかなと思うんですね。その点において、特に今回こういう問題が起きましたからそこのところはやっていくと思うんですけれども、これまでの情報共有の点はどうだったのか。
また、先ほどから出ている、例えばYSのときは、まさにそういう情報を共有しながら一つ一つ解決させていった、こういう歴史があるわけですけれども、今回も、安全対策の向上をするために、そういった情報を共有しながらやっていくシステムがボンバルディア社機の場合には必要なのではないかなと思うんです。その点はどのように対応されているのか、お伺いしたいと思います。
辻村参考人
ボンバルディア機を使用しておりますJALグループ、ANAグループの間におきまして、二年ほど前から、主要なふぐあいの情報につきまして、定例及びその都度の情報交換を行ってきております。それで、それが早期対応に役立っているというふうに聞いております。また、現業においても、作業経験等の情報交換を行っていると聞いております。
高木(陽)委員
この点については、今回問題が明らかになって、いろいろな報道をなされると、ある意味では風評被害な部分というのはかなりあると思うんですね。逆に言えば、定期航空協会を初め各エアラインがそういう点について情報発信をしていただきたいと思うんです。そうすることによって、逆に安心感というのは高まってくるのかなと思いますので、この点はよろしくお願いしたいと思います。
続いて、杉浦参考人にちょっとお伺いしたいんです。
今のことにもちょっと関連するかもしれないんですけれども、日本の場合は、安全プラス安心というのが日本人の意識の中にある、欧米は、安全ということで一つクリアされて、さらに言えば、航空機を初めトラブルはあるものだ、こういう前提からスタートするというお話がありました。この点については、いろいろな方法があると思うんですけれども、先ほども陳述で少し述べられましたけれども、この点を日本の場合はどうしていったらいいのか。日本人に意識を変えろと言ってもそう変わりませんから、この点の対応策についてもう少し伺いたいと思います。
杉浦参考人
やはり欧米と日本の考え方が違うというところを皆さんにも理解していただきたいなというふうに思うんですね。ですから、一つには、今回のようなことが起こると、航空機メーカーは自分たちでも相当鉢巻きを締め直して本格的にやるのではないかというふうに思われるかと思うんですが、残念ながら現実にはそうではなくて、航空機メーカーはなかなか重い腰を上げてくれないというのが現実なわけですね。ですから、そういう点からいえば、今回はやはり日本が、エアラインと国土交通省の方も一緒になって、本格的にカナダに対して強い意見を言って圧力をかけていくというようなことがぜひとも必要ではないか、こういうふうに思います。
もう一つは、日本人の考える安全品質というものについての内容を分析したときに、やはり航空会社の方も、事故がないから大丈夫ですと言うだけではなくて、もうちょっと周辺情報をPRするとか、そういう姿勢が当然必要になってくるのではないか。つまり、牛肉の輸入なんかが典型例だと思うんですけれども、アメリカサイドは大丈夫だ大丈夫だと言っているわけですが、日本の消費者の方はどうして大丈夫だと言えるのかというところを知りたい。同様に、今回の一連の事故等についての解析と、それから、とった安全対策がどういうことなのかということをもうちょっとつまびらかに国民に示していただきたいなというふうに思うんですね。
先ほどちょっと御質問があった点なんですが、一つ最近の情報としてありますのは、ボーイングあたりは初期不良について相当積極的な対応をとっている。今まではメーカーとユーザーとの間の二者だけでやっていたわけですので、ほかのユーザーはその情報について知らないという状況だったわけですけれども、ボーイングは、現在就航しました777、トリプルセブンの就航の段階から、レディー・ツー・サービスといううたい文句を掲げまして、ユーザーに全部トラブル情報をボーイングのパソコンから見られるようにしているんですね。それによって、ほかのユーザーも、他社で起こった状況、それに対応する対応策、そういうものが全部わかるような、そういう仕組みを構築することによって初期トラブルを大幅に減らしたという実績もありますので、やり方によってはまだまだ初期トラブルというものを減らす方法というのはあるのではないかなというふうに私は思います。
高木(陽)委員
時間が参りました。本当に貴重な意見をありがとうございました。きょうは航空局長も傍聴されておりまして、国交省の方もしっかりとこういった意見を参考にしながら対応していただきたいということを申し上げまして、質問を終了したいと思います。
どうもありがとうございました。
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