特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案(内閣提出、参議院送付)の趣旨説明及び質疑
高木陽介君
公明党の高木陽介でございます。
私は、自由民主党並びに公明党を代表して、ただいま議題となりました特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案に関し、基本的項目についての確認とともに、国民生活にとって大切な安全、安心の住宅政策促進へ向けた国土交通大臣の決意を伺ってまいりたいと思います。(拍手)
昨年の三月六日、公明党は耐震構造設計偽造問題対策本部として、当時の北側国土交通大臣に対し、耐震強度偽装問題の再発防止策を講ずるよう申し入れました。これに対して、大臣は、再発防止に全力を挙げることを約束し、中でも瑕疵担保責任の履行確保については、住宅取得者を保護する仕組みが必要との考えを示されました。
こうした背景のもと、構造計算書偽装問題を改めて点検いたしますと、大きく三つの問題が明らかになりました。第一には、まず建築時における建築確認検査がしっかりなされていたのかどうか。第二は、そもそも住宅の設計等を行う建築士の資質、能力がしっかり確保されていたのか。三つ目として、売り主等が倒産などをした場合、瑕疵担保責任が履行されず、住宅の買い主が極めて不安定な状態に置かれることになったという点であります。
これらの問題に対応するべく、昨年来より建築基準法の改正、それに次ぐ建築士法の改正が行われました。それに加えて、売り主等の瑕疵担保責任履行のための資力確保の措置を義務づけることにより、消費者の保護を全うすることを目的とした本法律案が第三弾として提出されたものと認識しております。
これら一連の見直しによって、事件以来国民が抱いていた住宅取得の際の大きな不安感が払拭できるとお考えか。国民は安心して住宅を取得することができると言ってよいのか。まず、国土交通大臣の御意見を伺いたいと思います。
さて、本法律案では、建設業者及び宅地建物取引業者に対し、新築住宅に係る瑕疵担保責任の履行の確保を図るため、住宅建設瑕疵担保保証金等の供託、または住宅瑕疵担保責任保険契約の締結を義務づけております。中でも保険制度の導入は制度の大きな柱となっております。私も、従来より、消費者保護を図るため、住宅に係る保険制度は極めて重要であると考えてきたところであり、今般の法律案において、供託または保険を義務づける制度が導入されることは画期的なことと考えております。住宅の売り主や消費者の任意による保険制度ではなく、供託または保険を義務づける制度の導入に至った経緯を含め、政府の考えについて確認しておきます。
次に、消費者保護の観点から、保険制度について、売り主等の故意、重過失の場合の対応についてお尋ねをいたします。
消費者は、瑕疵のある住宅を買わされた場合、売り主の故意、重過失によるものであろうと、通常の瑕疵であろうと、一律に救済してもらいたいと思うのではないでしょうか。特に、売り主等が故意、重過失に基づく瑕疵のある物件を売却し、その後、倒産をしてしまったような場合こそ、損害の回復の手段を失うことから、保険によって、より強く救済を願うところかもしれません。一般的には故意、重過失による損害は保険金支払いにはなじまないとされていますが、消費者保護に万全を期するとの立場から、どのような対応がなされるか、伺いたいと思います。
売り主の故意、重過失の場合において、さらに売り主等が倒産する場合というのは、まれなケースと言ってよいでしょう。しかし、さきの構造計算書偽装事件のように、一たん事件が発生すれば、住宅という高額な対象ゆえに、その損失額は巨額に及びます。保険料の一部を積み立てることにより創設される基金だけでは、十分な補てんができない場合、資金が枯渇する場合なども想定されます。本法律案において故意、重過失による消費者の損害についてどのように担保するか、説明を求めます。
次に、この法律の柱をなす保険制度において、保険契約を引き受けることとなる保険法人について伺いたいと思います。
本法律案では、国土交通大臣が保険法人を指定し、その指定保険法人が保険契約を引き受けることとしております。今までも財団法人や民間会社が任意で住宅に係る保険を引き受けてきておりますが、年間に数十万戸にも上る保険契約を引き受ける可能性を踏まえますと、保険法人の体制整備をしっかり行うことがまず必要ではないかと考えます。本法律案ではどのように措置をされるのか、伺いたいと思います。
また、本法律案によって、瑕疵担保責任の履行確保、消費者保護を目的として制度が創設されるのですから、保険法人が保険金の支払いをすることができなくなるような事態を絶対に起こしてはなりません。保険法人による支払い確保のための担保としてはどのような措置を考えておられるのか、あわせてお尋ねをいたします。
先ほども申し上げたとおり、本法律案は、瑕疵担保責任履行のための資力を確保する方法として二つの制度を導入しております。一つは保険制度、そしてもう一つは保証金の供託の制度であります。
これにより、消費者の保護策は大きな前進、大きな効果が期待できることは明らかでありますが、一方、売り主等が保証金の供託あるいは保険料を支払うということは、そこに新たな売り主の負担が発生することであり、その売り主の負担は、めぐりめぐって消費者の負担増につながることにならないのか、ひいては、住宅の円滑な供給にも支障を来すのではないかと懸念されるところでもあります。本法律案において、この点についてはどのように考慮されているか、伺います。
供託と保険の二つの制度、選択肢が複数であることは、制度を円滑に住宅市場に根づかせる上で好ましいことと思います。しかし、この二つの制度が並行して運用されていく中で、保険制度については、保険契約の引き受けに当たり保険法人が住宅の検査を行い、瑕疵の防止、品質の向上にも資するという制度となっているのに対し、供託制度にはこのような仕組みがないことから、住宅の性能確保、品質の向上についての懸念が生じます。供託であろうと保険契約であろうと、住宅全体についての瑕疵の防止及び品質の向上が図られることが必要と考えますが、どのように担保されることになるのか、お伺いしたいと思います。
本法律案によって消費者保護の制度は大きな前進を望めることとなりますが、諸制度を生かすかどうかは、今後の制度設計、運用に加え、個別の現場で起こる具体的な買い主と売り主との住宅に係る紛争に対し、しっかり対応できるか否かにかかっていると言えます。紛争処理が仮に不十分であったとしたら、本法律案が考える新しい消費者保護の制度は画竜点睛を欠くとの非難さえ受けかねません。
住宅保証機構の住宅性能保証制度の現在の利用数は、住宅着工数の一割程度と言われております。本法律案により、紛争処理制度の利用数の大幅増加が見込まれるところでもあります。本法律案では、住宅品質確保法に規定する指定住宅紛争処理機関が、保険契約に係る新築住宅についての紛争の処理に当たることとされておりますが、利用数の増加が円滑かつ適切な業務遂行に支障を来すことはないかを確認しておきたいと思います。
他方、本法案は、供託金対象の住宅を紛争処理の対象とはしておりません。その理由の一つは、供託の場合は保険の場合と異なり、施工段階で必ずしも品質の検査があるとは言えず、紛争処理のための十分な資料が整えられるとは限らないことが挙げられましょう。
しかし、消費者保護の考え方からすれば、保険つき住宅と供託金対象の住宅で被害救済の方法に差異があることは好ましいこととは言えません。住宅は、一個人の資産だけにとどまらず、世代を超えて継承されるべき社会的財産に違いありません。したがって、全住宅について、住宅品質確保法による性能表示制度を利用することにより、供託金対象の住宅についても紛争処理をサポートする新しい体制が検討できないものか、お尋ねをいたします。
さきの構造計算書偽装事件は、関係する物件を購入した人とその家族に極めて深刻な打撃を与えました。住宅は、大多数の人にとって、一生に一度購入できるかどうかという大きな買い物であります。購入のために一家で日常の生活費も切り詰め貯蓄し、やっと手に入れた夢にまで見た我が家。それがある日突然、重大な欠陥があることを知らされた購入者の悲憤、悲しみは当事者しかわかりません。
私の住む地域でも耐震強度の不足を告げられたマンションがあり、私も何らかの善後策はないものかと国とかけ合い、市に要望するなど奔走しました。住民の皆さんの意向に十分沿った対応ができたとは言えず、内心じくじたる思いを禁じ得ません。それだけに、確実に瑕疵担保責任が履行される本法律案による体制の整備に私自身も強い期待を寄せております。
改めて申し上げるまでもなく、瑕疵のある住宅に対する対応策は大切でありますが、より肝心なのは、瑕疵のない住宅の供給であります。安全、安心、良質な住宅を国民に提供するために、官民ともにさらにさらに努力を積み重ねていかなくてはなりません。
住生活全般の質の向上のために、国土交通大臣の強い決意を伺って、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣冬柴鐵三君登壇〕
国務大臣(冬柴鐵三君)
高木陽介議員から、九点について質問をいただきました。順次答弁をさせていただきます。
一連の法改正により消費者の住宅に対する不安を払拭できるのかという点についてお尋ねがありました。
構造計算書偽装問題発覚後、判明した諸問題に対応すべく、昨年来、建築基準法及び建築士法の改正により、建築確認検査の強化、建築士の業務の適正化等、安全についての対策の強化を行ってまいりました。さらに、本法案により、住宅の売り主等に対して瑕疵担保責任履行のための資力の確保を義務づけることにより、消費者保護に万全を期すこととしており、一連の措置により、国民に安心して住宅を取得いただけるものと考えております。
供託または保険を義務づけた経緯についてお尋ねがございました。
構造計算書偽装問題を契機として、新築住宅の売り主等が十分な資力を有さず瑕疵担保責任が履行されない場合、新築住宅の購入者が極めて不安定な状況に置かれることが改めて認識され、国民の住宅取得に対する不安が強まりました。
このような中、住宅に対する国民の信頼を回復し、消費者保護を全うするために必要な措置として、住宅が高額であることにもかんがみ、売り主等に資力確保の措置として供託または保険を義務づけることとした次第であります。
本法案の保険制度における売り主等の故意、重過失の場合における消費者保護のための措置についてお尋ねがありました。
消費者保護の観点からは、売り主等の側の故意、重過失の有無にかかわらず、住宅の瑕疵による損害をこうむった買い主等の救済が図られることが重要でございます。
本法案においては、住宅の売り主等の故意、重過失を原因とする瑕疵について、売り主等が倒産していない場合にも保険金の支払い対象とすると、売り主等のモラルハザードを惹起することから、売り主等の負担によりみずから修補を行うことを原則としておりますが、売り主等が倒産する等、瑕疵担保責任の履行ができない場合に、買い主等が保険法人に対し保険金の直接請求ができることとすることにより、消費者の保護を図ることとしております。
具体的な仕組みとして、保険料の一部をもとに基金を創設することとしております。基金創設時等において、多額の保険金支払いが発生し、資金不足を生じた場合には、既存の住宅保証基金からの無利子貸し付けが行えるよう措置を講じており、これにより、仮に資金が不足した場合においても消費者の救済を図ることとしております。
保険法人の体制整備及び保険金の支払い確保の方策についてお尋ねがございました。
保険法人は、瑕疵担保責任の期間である十年以上にわたり有効な保険を安定的、長期的に扱う法人であるため、指定に当たっては、保険契約の引き受けの前提となる現場検査の能力の有無、保険業務の的確な実施に必要な財産的基礎の有無について十分な審査を行い、しっかりした体制を有するものを指定することとしております。
また、住宅瑕疵担保責任保険においては、住宅が高額な資産であることから、事案の状況によっては大きな保険金支払いも予想され、損害保険会社による再保険を活用すること等により、保険金支払いを確実にすることとしております。
次に、売り主及び消費者の負担の増大に対する懸念についてお尋ねがございました。
本法案では、新築住宅の売り主等に対して、瑕疵担保責任履行のための資力の確保を義務づけることとしております。このため、売り主等の負担が生ずることとなりますが、その負担が合理的なものとなるよう供託金額の設定を行っており、今後の保険料の設定に当たっても配慮してまいりたいと考えております。
売り主等がその費用をどのように調達するかについては、個々の売り主等が判断することとなりますが、市場における競争や消費者による理解等を勘案し、適切な対応がなされるものと考えております。
消費者の意識調査結果からも、安心を得るための一定の負担は御理解が得られるものと考えております。売り主等に対し資力の確保を義務づけることにより、国民が安心して住宅を取得できるようになることが、結果として円滑な住宅の供給に資するものと考えております。
住宅全般についての瑕疵防止及び品質向上の措置についてお尋ねがありました。
保険制度においては、第三者である保険法人が保険を引き受けること、売り主等が瑕疵担保責任を履行した場合のてん補が保険によって行われることから、保険法人が、リスクマネジメントの一環として、その引き受けに当たり検査を行うことが必要となり、結果として瑕疵の発生防止、品質向上に資することとなります。
供託については、売り主等がみずからの財産により瑕疵修補を行うものであり、売り主等がみずから瑕疵の発生防止、品質の向上に努めるものと考えておりますが、さらに、性能表示制度の普及等により、住宅性能の向上に努めてまいります。
指定紛争処理機関の円滑な業務遂行についてお尋ねがございました。
本法案により、住宅品質確保法に基づく住宅紛争処理機関が保険契約に係る新築住宅に関する紛争処理を行うことができるようになることに伴い、住宅品質確保法に規定する住宅紛争処理支援センターの業務を拡大しております。
具体的には、指定紛争処理機関に対し、保険契約に係る紛争処理の業務の実施に要する費用の助成、保険契約に係る紛争処理に関する情報、資料を収集、整理し提供することとしており、指定紛争処理機関の利用が増大した場合においても、簡易迅速で円滑な紛争処理が行われるよう支援をしていくこととしております。
供託の対象である住宅に関する紛争処理についてお尋ねがございました。
本法案において、指定住宅紛争処理機関が保険契約に係る新築住宅の紛争処理を行うことができることとしたのは、保険法人が検査を行い、その結果の資料が保管されるため、指定住宅紛争処理機関による迅速簡易な紛争処理になじむことによるものです。
紛争処理の重要性は十分に認識しているところであり、住宅品質確保法に基づき同様の紛争処理を行っている性能表示制度の普及を図ること等を通じて、紛争処理体制の充実、拡大に努めてまいります。
最後に、住生活の質の向上に向けての決意についてお尋ねがありました。
これまでの建築基準法、建築士法の改正及び本法案により、住宅の瑕疵の発生を抑制するとともに、万一、瑕疵が発生した場合でも確実に瑕疵担保責任が履行される体制を整備したところであります。
これら一連の措置により、安全、安心な住宅を供給するとともに、昨年制定されました住生活基本法を根幹とし、住生活全般の質の向上を図っていくための政策を積極的に講じてまいります。(拍手)
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