連載29 説明つかない道路特定財源の一般化


 
 
説明つかない道路特定財源の一般化
 
 

 
 
 
地方、都市で税金負担に差
 
 私は東京・大田区で生まれ育った。小学生だった昭和40年代初めの東京は、まだ未舗装の道路が多かったものだ。
 
 ガソリン(揮発油)税など道路特定財源の制度は昭和29年、遅れている道路整備を目的とする税金で、田中角栄元首相らによる議員立法でスタートした。
 
 今月に入り政府・与党内ではその財源を、使途を限らない一般財源化とするか否かで熱い戦いが行われた。
 
 結局、8日の閣議決定では与党の強い反発によって、一般財源化を明確に打ち出したのは「道路整備費を上回る税収分」にとどまった。マスコミの評価は「玉虫色で終わった一般財源化」(読売)、「安倍政権は族議員に屈した」(毎日)と、全体的に厳しかった。
 
 財政が厳しい状況の中で、「道路だけ“聖域”でいいのか」との論調がある。一方、「地方の道路はまだ未整備。都市部でも渋滞など道路の課題は多い」との意見もある。
 
 その上で、東京・多摩地区の住人として、道路の現状を述べたい。
 
 多摩は人口約390万人。都道府県でいえば静岡と並び全国で9位。ところが、片側2車線の南北幹線道路は多摩にはない。23区の西端に環状8号線があるが、これは多摩ではない。そこから西へ府中街道、小金井街道などの南北の都道は、大半が片側1車線で常に渋滞している。
 
 環8から西へ40?。国道16号にぶつかるが、これは一部がまだ1車線。23区と比較して、多摩住民がよく「三多摩格差」というのは、人口の割には全国的に道路整備が遅れているからだ。
 
 また、多摩は鉄道のない分、車が住民の足として欠かせない。
 
 一世帯あたりの車の保有台数は中野区0・31台。立川市0・87台。しかも世帯あたりの年間走行距離は、中野の1940kmに対し、立川は約3倍の5739km。
 
 その分、ガソリン税や自動車重量税など特定財源をみると、中野は年間約2万円を払い、立川は5万6000円払っている。
 
 道路に使うという理由で負担をしてきた税金が一般財源になると、中野区民に比べて立川市民がより多く税金を負担することになる。車が必需品となっている地方がより多く財政再建に寄与しなければならないのだろうか。これはなかなか説明がつかない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(平成18年12月19日付 夕刊フジより転載)
 
 


2017年02月20日