連載102 政調なき民主党への不安


 
政調なき民主党への不安
 
 
 
 
 
 
自らの政策決定経過も知らず
 
 民主党は政策を議論する「議員政策研究会」を設置することになった。
 
 昨年の政権交代後、「政策決定の内閣一元化」という方針を打ち出した民主党は政策調査会(政調)を廃止した。大臣、副大臣、大臣政務官ら政府に入った議員は、予算編成や法案策定に携わったが、それ以外の民主党議員は政策決定に関与できなくなった。報道によると、中堅・若手の議員からは不満が強まり、政調復活を求める声があがっていたという。
 
 いうまでもなく、国会は唯一の立法機関。一人ひとりの国会議員は国民の代表として、予算や法律の審議、議決を行なう。政権交代をして間もなく半年。この間、政府に入らなかった民主党議員は政調のない中、どのようにその採決の判断をしてきたのだろう。各省副大臣主催の「政策会議」を開いていたが、最初の頃は百人以上も集まり、議論をするどころか法案や制度の説明会で終ったという。ある省の幹部官僚に聞くと、最近はその「政策会議」の出席者もめっきり減り、「まるでガス抜きの会合だ」と話していた。
 
 もちろん、政調がなくても個人で政策や法案を勉強している人はいるだろう。しかし、「これは勉強不足だな」とうかがわせる場面に遭遇した。
 
 民主党マニフェストの一つ「高校授業料無償化」法案の衆議院本会議での質疑での出来事。一年生の民主党女性議員が「給付型の奨学金制度も確立すべきではないか」と文部科学相に問いかけた。
 
 すると、私の後ろに座っていたわが党の議員が、「給付型奨学金を削ったのは民主党だろう。自分で削って、何が確立すべきだー」と野次を飛ばした。質問をしていた議員は一瞬、キョトンとした表情になった。
 
 まだ自公政権だった昨年8月、実質的な給付型奨学金の交付となる「高校奨学金事業等の充実改善」事業で455億円を概算要求に計上していた。鳩山内閣は自公政権の概算要求をいったん白紙にしたが、昨年10月の概算要求では同事業に120億円を改めて計上。
しかし、年末に決定した平成22年度予算案には、計上はゼロであった。その決定は民主党政権が行ったものだ。
 
 自らゼロと査定しておきながら、本会議で要求する矛盾。質問者は一連の経過を知らなかったとしか思えない。
 
 新たにスタートする「議員政策研究会」で、民主党議員はどのような勉強をするのか。政策決定には、民主党の議員一人ひとりが責任をもってもらいたいものだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(平成22年3月10日付 「夕刊フジ」より転載)
 
 

2017年02月20日