連載9 トリノ五輪苦戦で思う長期的取組みの大切さ



 
トリノ五輪苦戦で思う長期的取組みの大切さ
 
 


 
 
中学時代に見た男子バレーボールのアニメ
 
 トリノ冬季五輪で日本勢が苦戦している。
 
 開幕前、メディアは「メダル○個は確実」と盛り上げていた。だが、フタを開けてみると、期待していた種目でメダルに届かない。
 
 なぜ勝てないのか。理由はいろいろあるだろう。そんな中、34年前(1972年)のミュンヘン五輪を思い出した。
 
 男子バレーボール。準決勝のブルガリア戦だ。2セットを取られた日本は、第3セットもリードされ、そこから奇跡の逆転勝ち。中学1年の私は、翌日の授業のことも忘れ、徹夜でテレビにかじりついた。決勝も東ドイツを敗り、金メダルに輝いた。
 
 40歳以上の人は覚えている人も多いと思う。当時、男子バレーチームを主人公にしたアニメ「ミュンヘンの道」のことを。大古、横田、森田、猫田といった選手一人ひとりを、毎週日曜の夜、ドキュメンタリータッチで描いていた番組だ。
 
 番組の最後に「ミュンヘンまであと○○日」という文字が出てくる。いやがうえにも五輪気分が盛り上がったのを覚えている。
 
 当時の松平康隆監督は、8年計画でチームを作り上げた。64年の東京五輪でバレーといえば「東洋の魔女」といわれた女子チームが脚光を浴びた。女子は「金」で男子は「銅」。そこから、4年後ではなく、8年後に目標を置き、ドラマはスタートするのだ。
 
 そして、68年のメキシコ五輪で男子チームは「銀」を獲得。その後も「金」への道は試練の連続だった。アニメで学んだというのも何だが、やはり目標達成のためには、簡単にはいかないと感動した。
 
相手のいる戦いだ。メダルは簡単にとれるものではない。今回のトリノでも、選手は頑張っていると思う。しかし、「ミュンヘンへの道」ほど突きつめて努力した選手、チームはどれくらいいただろうか。
 
 
政治だってその場だけの対応ダメ

 今回の五輪で、JOC(日本オリンピック委員会)の選手団派遣費用(渡航・滞在費)は約6千万円。そのうち約4千万円は税金が投入されている。スポーツ振興のための税金はいいと思う。ただ、派手なパフォーマンスをして惨敗する姿はあまり見たくない。
 
 目標達成のための計画。そして努力。これはスポーツだけではない。政治も同じだ。激変する社会の中で、その場だけの対応ではなく、何年も先を視野に入れて取り組まねばならない。

 
 
 
 
 
 

(平成18年2月21日付 夕刊フジより転載)
 
 

2017年02月20日