連載132 「強さ」「たくましさ」が政治にも必要


 
 
「強さ」「たくましさ」が政治にも必要
 
 
 
 
 
 
 
 清楚で凛とした日本女性の美しさを表わした「大和撫子」。
 
 世界の頂点にたった女子サッカー日本代表には従来の「なでしこ」の意味に「強さ」「たくましさ」を加えてもよさそうなW杯決勝戦だった。
 
 18日の月曜の明け方。多くの人が眠い目をこすりながら興奮したと思う。私も目覚まし時計をセットし、午前3時半にはテレビの前に座った。
 
 0‐0のまま後半に入って米国に先制を許すと「やばい」と思ったが、すかさずMF・宮間が同点弾。延長もリードされた時は、「これまでか」とあきらめかけたが、救世主はやはり主将・沢だった。取られたら取り返す。米国に得点を許してもあきらめない驚異的な粘りはどこから生まれてきたのか。
 
 その淵源は2009年11月、福島県のJヴィレッジでの合宿といわれる。なでしこジャパンに加え、U‐19(19歳以下)日本代表ら60人が集まった。沢を中心に話し合い、「世界大会で頂点を目指す」ことを確認した。前年の北京五輪は4強を狙って、4強で力尽きてしまった反省だった。
 
 そういえば、「事業仕分け」とやらで「2番じゃダメなんですか」と発言をした女性議員もいたが、やはり、「1番」を目指さずして、偶然にトップに立つことはない。
 
 その頂点にたった「なでしこ」をあらゆる面でけん引してきたのが沢だ。15歳で代表入りして五輪3回、W杯5回の出場の大黒柱だが、準決勝、決勝と値千金のゴールを見事決めてくれた。
 
 宮間が北京五輪の際、「苦しい時には私の背中を見なさい」と沢に声をかけられ、最後まで沢の背中を見て走ったというエピソードは有名だ。
 
 最近のスポーツ界では女性アスリートの活躍が目ざましいが、ネットの世界で力強い女性アスリートを頼りになる「兄貴」と呼んでいる。
 
 特にサッカーの沢、レスリングの吉田沙保里、ソフトボールの上野由岐子が「3大兄貴」だそうだ。まさに自らのプレーで周囲に安心感を与えている女性アスリートたちだ。
 
 一方、震災以来わが国の「父親」「兄貴」役にならなければない首相は言葉が軽く、批判を受けるとすぐに言い訳をする。その「背中」を見ても国民は安心どころか不安を感じている。
 
 「なでしこ」の優勝は日本の復興に「勇気」と「希望」を与えてくれた。それは「なでしこ」というより「サムライ」のような気もする。その「勇気」と「希望」を現実のものとする「サムライ」の行動こそ今の政治の責任と肝に銘じたい。
 
 
 


 
 
(平成23年7月20日付 「夕刊フジ」より転載)


 

2017年02月20日